「兵庫経協」2026春号

【歯の健康シリーズ】 T O P I C S 妊娠期は、つわりや生活・食習慣の変化に伴う口 腔衛生環境の悪化に加え、亢進した女性ホルモンの 影響によって、う蝕や歯周病、妊娠性エプーリスな どの様々な歯科疾患の発症リスクが高まる時期とい えます。しかしながら、胎児への悪影響を心配する あまり、歯科受診を躊躇して適切な歯科治療を受け ないまま放置してしまう妊婦が多いようです。さら に出産後においても、育児・家事におわれ歯磨きが 怠りがちとなり、う蝕が多発し、歯周病が進行して しまうというケースが多いのが現状のようです。 そのため、各市町で実施されている妊婦歯科健診 を受診し、かかりつけ歯科医院と連携し、適切な妊 婦歯科治療に取り組む必要があります。妊婦歯科治 療は妊婦自身の歯科疾患予防のみならず、”未来を 拓く歯科分野”として元気な赤ちゃんの出産(早産・ 低体重児出産の予防)ならびに、生まれくる子供の う蝕予防(う蝕細菌の母子伝播予防)にもつながる からです。 1)妊娠初期(4カ月頃まで) 妊娠初期において、約70%の妊婦につわりが生じ ると言われています。つわりによって生活・食習慣 が乱れ、嘔気によって歯磨きが十分にできず、口腔 内環境が悪化することが多くなります。つわりの内 容や程度には非常に個人差があり、例えば糖分を多 く含む食品や清涼飲料などをとる頻度が増すような 場合には、う蝕のリスクが高まります。さらに、柑 橘類など酸性食品の頻回な摂取、あるいは妊娠悪阻 で嘔吐が妊娠期間中に頻回に繰り返される場合に は、酸蝕症が引き起こされるリスクも高まります。 2)妊娠中期(5〜7カ月頃) つわりも治まり、安定期と呼ばれる妊娠中期は、 一般的な歯科治療を行う上では最適な時期です。 この時期に口腔内の違和感や痛みなど、自覚症状 が少しでもあれば、早期に歯科医院を受診し、適切 な妊婦歯科治療を受けることで、精神的・身体的 な負担を減らすことができると思います。 3)妊娠後期(8〜10カ月頃) 妊娠後期には、チェアーで仰向けとなって歯科 治療を受けることが苦痛となります。 さらに、出産のため治療が中断となる場合には、 適切な応急処置を行って、出産後に治療を再開す ることも必要です。妊婦自身が妊娠中出来るだけ 口腔内の不安やストレスを感じないように、積極 的に妊婦健診及び妊婦歯科治療を受診し、健康な 口腔内状態で出産を迎えることで、その後の育児 にも集中することができ、子供の健やかな成長に も繋がっていくと思います。 兵庫県歯科医師会 地域保健員会委員 井上 景 妊産婦の歯科治療 15 兵庫経協 2026年春号

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