当社ではコロナ対策の一環として、 リモート勤務を幅広く認めてきました が、最近、海外のAmazonや日本のホ ンダなどのように、原則出社とする企業が増えて いるようです。当社でも社内コミュニケーション の活性化や労務管理の徹底などの観点から、リ モート勤務を廃止し出社を原則にしようと考えて おりますが、なにか問題はありますでしょうか。 1 はじめに 2020年(令和2年)以降のコロナ禍を 端緒としてリモート勤務を導入した企 業は非常に多く、総務省の『情報通信白書』により ますと、テレワーク(リモート勤務)の導入率は、 コロナ禍前の2019年には20.2%であったものが、 わが国史上初の緊急事態宣言が発令された2020年 には47.5%、翌2021年には51.9%と最大値を記録 しており、概ね日本の企業の半数以上がリモート 勤務制度を導入していたことになります。 しかしながら、ご質問にあるとおり、コロナ禍 が落ち着いて以降はむしろ事業場への出社を求 める‘出社回帰’に転換する企業が増えており、リ モート勤務制度自体を廃止することを検討されて いる企業も少なくないようです。 この風潮には様々な理由があると思われますが、 一つには、ご質問にあるようにリモート勤務にお ける労務管理の大変さがあるものと考えられます。 日本の労働基準法には、事業場外での勤務を想定 したみなし労働時間制(労働者が労働時間の全部 又は一部について事業場外で業務に従事した場合 において、労働時間を算定し難いときは、所定労 働時間労働したものとみなす。[労働基準法第38 条の2])がありますが、かかる制度の適用を受け ることができるのは法文にあるとおり「労働時間 を算定し難いとき」に限定されており、事業場外 のリモート勤務だからといって自動的に適用さ れるわけではありません。厚労省の『テレワーク の適切な導入及び実施の推進のためのガイドラ イン』でも、たとえば使用者の具体的な指揮監督 が及ばず、情報通信機器が常時通信可能状態に 置かれていないなど、実際に「労働時間を算定し 難い」といえることが必要とされており、電話や メール、チャット、日報等で実質的に労働時間を 把握することが可能であればみなし労働時間制の 適用が否定される可能性が高く、むしろ一般的な リモート勤務においては適用が無いと考えるのが 無難とすらいえるでしょう。したがいまして、リ モート勤務の場合であっても企業としては労務管 理が必須となりますが、しかしながら事業場内で の労務管理と比してとその正確な管理が容易でな いため、これを嫌ってリモート勤務の廃止を検討 するケースも多いようです。 また、制度の導入当初はコロナ禍を契機とした やむを得ないケースに限定的に適用する制度で あったものが、最近では導入時には全く想定して いなかったようなケースにもなし崩し的に認める ようになってしまい(特に多いのが、身体的ない しは精神的な私傷病等で事業場への出社が難しい ものの自宅勤務であれば大丈夫というような労働 者に対してリモート勤務を認めるようなケースが 間々あるように思われます。)、会社として収拾が つかなくなって廃止を検討するケースも少なくな いと思われます。 そこで、リモート勤務制度を廃止するに当たっ ては、法的に何が問題となり得るのでしょうか。 2 労働条件の不利益変更 リモート勤務制度を廃止するに際しては、これ を廃止することが労働者にとって労働条件の不利 益変更に当たるかどうかが問題となります。労働 条件の不利益変更は労働契約法において原則的に 禁止されており、個別合意がある場合か、あるい リモート勤務を廃止し出社を原則とすることは可能か。 Q A Q&A 労働問題 弁護士 西中 秀允 (江戸町法律事務所) 8 兵庫経協 2026年春号
RkJQdWJsaXNoZXIy Mjc4NTQzNg==