「兵庫経協」2026夏号

当社は食品工場を運営しています。 繁忙期のため、いわゆるスキマバイト の仲介事業者を通じて、単発アルバイ トを募集し、Aさんを採用しました。 募集要項には、「勤務時間:10:00~18:00」 「服装:工場指定のユニフォームに着替えて勤務」 と記載していました。ところが、当日、Aさんは 10:00ちょうどに工場へ到着しました。工場の担 当者が「すぐに着替えてください」と案内しまし たが、着替えやロッカーの説明に時間がかかり、 実際に作業を開始できたのは10:15頃でした。 当社としては、10:00から作業に入ってもら うつもりでシフトを組んでおり、工程に遅れが生 じてしまいました。従来のスキマバイトの方は始 業時刻より早めに工場へ来て着替えを済ませてい たため、このような問題はありませんでした。 そこで、Aさんについて、スキマバイト仲介事 業者を通じて、10:00から10:15までの分の賃金 を減額するよう求めたいと考えていますが、問題 はありますでしょうか。 本件では、Aさんが10:00に工場へ 到着し、その後、会社担当者の指示に 従って、工場指定ユニフォームへの着 替えやロッカーの説明を受けていたのであれば、 その時間は会社の指揮命令下にある時間として、 労働時間に該当する可能性が高く、10:00から10: 15までの賃金を減額することは賃金不払いとして 労働基準法24条違反となるおそれがあります。 1 はじめに いわゆるスキマバイト(スポットワークともい われます。)は、短時間・単発の就労を内容とする 労働契約のもとで働く形態として、近年、急速に 利用が広がっています。 スキマバイトは、労働者にとっては空き時間を 活用でき、事業主にとっては一時的な人手不足に 迅速に対応できるという利便性があります。 その一方で、全国の労働基準監督署に、賃金不 払等の相談や申告が一定数寄せられており、厚生 労働省により、適切な労務管理の周知依頼が発せ られる(厚生労働省令和7年7月4日通知)ととも に、事業者・労働者双方向けのリーフレットが作 成されています。 2 スキマバイトにおける労働契約の成立時期 まず、Aさんとの労働契約がいつ、どのような 内容で成立したかを確認していきます。 通常の採用であれば、求人、応募、面接、採否 通知、内定、労働条件通知といった段階を踏むた め、どの時点で労働契約が成立したかが問題にな ることがあります。 これに対し、スキマバイトでは、求人条件がア プリ上に具体的に表示され、労働者が応募ボタン を押すと、面接や個別審査を経ずに、マッチング が成立することが多いと思われます。厚生労働省 作成のリーフレットにおいても、同様の考え方が 示されています。 本件においても、別途特段の合意がなく、面接 や選考を経ず、アプリ上の募集要項に基づいて就 スキマバイトで募集したアルバイトが始業時刻に工場へ到着した場合、 着替え時間分の賃金を減額できるか Q A Q&A 労働問題 弁護士 辻 のぼる (神戸NT法律事務所) 9 兵庫経協 2026年夏号

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