労者が確定する典型的なスキマバイトであれば、 Aさんが応募した時点で、「勤務時間:10:00〜18: 00」「服装:工場指定のユニフォームに着替えて勤 務」という条件で労働契約が成立したと評価され ると考えられます。 3 着替え・ロッカー説明の時間は労働時間に当 たるか 会社としては、10:00には制服に着替えて作業 場で作業を開始できる状態でいるべきだと考えて いると思われますが、その考え方には、着替えや ロッカーの説明の時間は労働時間に当たらないと いう前提がありますので、その点を確認していき ます。 労働基準法における労働時間とは、労働者が使 用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。 そして、最高裁は、作業服等の装着が使用者か ら義務付けられ、それを事業所内の更衣所等で行 うものとされていた事案において、当該装着等に 要する時間は、社会通念上必要と認められる限り、 労働基準法上の労働時間に該当すると判断してい ます。厚生労働省も同様のガイドラインを作成し ています(「労働時間の適正な把握のために使用 者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。 本件では、募集要項に「工場指定のユニフォー ムに着替えて勤務」と記載されています。食品工 場においては、衛生管理の観点から、事業所内の 更衣室で指定のユニフォームを着用して作業する ことが一般的です。 そうすると、Aさんは10:00以降、会社の指示 に従い、業務に必要な準備行為を事業場内で行っ ていたので労働時間に該当すると評価される可能 性が高いといえます。 したがって、10:00から10:15までの時間を賃金 対象外にすることは、賃金不払いとして労働基準 法24条違反の問題となる可能性があります。 4 着替えが常に労働時間といえるか もっとも、「着替え時間」であれば常に労働時間 に当たるというわけではありません。労働時間に 該当するかどうかは、あくまで当該着替えが使用 者の指揮命令下に置かれたものと評価できるかど うかによって判断されます。 先ほどの最高裁の事件においても、作業終了後 に事業所内の施設において体を洗う時間について は、使用者によって義務付けられてはおらず、体 を洗わなければ通勤が著しく困難であるとまでは いえなかったとして労働時間に該当しないと判断 しています。 また、近時の裁判例(大阪地裁令和7年10月30日 判決)では、制服の着用自体は求められていたも のの、制服がシャツ、ブルゾン、長ズボン等であ り、社会通念上、制服を着用して通勤することに 特段の支障がないものであり、事業所内の更衣室 で着替えるよう明確に義務付けていたとは認めら れず、更衣室の利用は労働者の便宜のためと評価 され、制服への着替えの時間が労働時間に該当し ないと判断されています。 このように、着替えが労働時間にあたるかどう かは、「制服・作業服に着替える必要があるか」と いう点だけで判断されるものではありません。 5 まとめ 以上からしますと、会社としては、着替え時間 は常に労働時間であるとまで考える必要はないも のの、食品工場のように、指定ユニフォームへの 更衣が業務の性質上必要であり、かつ事業場内で の更衣やロッカー利用が会社の管理下で行われる 場合には、その時間を労働時間として取り扱うの が安全だといえます。 具体的には、「勤務時間:9:45〜18:00」「9:45〜 10:00に更衣、ロッカー説明等」「10:00からライン作 業開始予定」などと記載することが考えられます。 経営側の視点で活動する「兵庫県経営法曹会」メンバーに、事業運営上のお悩みを相談しませ んか? 企業経営に関わることであれば対応します。エキスパート弁護士をご紹介しますので、 是非、ご活用ください。 お申込みは、ホームページ、または、QRコードをご利用ください。 https://www.hyogokeikyo.com 兵庫県経営者協会 初回 相談無料 (60分程度) 10 兵庫経協 2026年夏号
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